ジュニア基準・「トライアルの報告」より
例年12月には、キッズクラスから数名の子どもたちが、翌年の「ジュニアクラス」入りを賭けてトライアル登山に挑みます。ここ二年は倉岳山(山梨・大月市)を舞台に、日帰りで10キロほどの行程を歩きます。今季は6名の子どもが挑戦し、4名合格、2名不合格となりました。合格した子どもたちはよほどの事情がない限り、小学6年生まで山登りを続けます。
親子山学校のジュニアトライアルでは、子どもたちのどんなところを観察し評価しているのか。昨年12月24日に実施したトライアルの審査結果から、その一部を初公開します。
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当日は、親御さんも立ち合いのもとで行いましたので、実地状況はご覧になった通りです。実地そのものは、何一つ特別なことはしていません。私は子どもたちの後ろについて、登りと下りを中心に、それぞれの歩く様子を拝見しました。
子どもたちを見る評価の基準はただ一つ、その歩きやその行動が「ジュニアで登る山に通用するかどうか」です。キッズクラスでは大目に見られても、ジュニアでは決して見過ごせない大事な事柄です。そのジュニア基準とは何かを、皆さんにも具体的に分かりやすく示すために、「カラダの評価」と「ココロの評価」の二つに大別しました。
さらにAからDまでの四項目から子どもの達成度を見て、それぞれを5段階評価にしました。オール5なら満点の20点。合格ラインは15点以上としました。したがって15点以下は不合格となります。
■カラダの評価
A・「脚力があるか」
登り、下りとも登山中の歩行ペースに、しっかりと合わせて歩けるチカラがあるかどうかを見ました。ジュニアクラスでは学年、年齢に関係なく、最後まで基準となるペースに合わせて歩けることが不可欠となります。後半になるほどスピードを上げて歩かなければならない場合もあります。持久力ではなく、ギアを上げたり下げたりしながら、状況に合わせて歩けるチカラが求められます。
B・「バランスよく歩けているか」
段差の少ないコースを選んで歩くこと(ルートのライン取り)や、足運び、足の置き場が安定しているかどうかを見ました。転んだり、尻餅をつく回数が多いのは、カラダの軸が不安定で、カラダのバランスがまだ整っていない証拠です。ジュニアクラスでは、岩場や段差の激しい登りや下りでも、そこで悩んだり止まることなく確信を持って安全に通過してゆける判断と実践が必要になります。カラダのバランスが良くないうちは、高山ではリスクも高まります。
■ココロの評価
C・「冷静にファイトしているか」
ジュニアクラスで登る山では、今まで以上に難度の高いルート、気象の変化、肉体的な疲労や精神的なつらさなど、刻々と変化する状況に晒されます。そうした中にあっても、冷静さを失わず忍耐力をもって乗り越えてゆく強さが求められます。自分の弱点を認める勇気と、苦しいときほど気持ちを落ち着かせて周りや仲間を見回せる余裕。ココロの芯の強さを見ます。
D・「主体的に取り組んでいるか」
ジュニアクラスでは、子どもの世話を親がやっているようでは親子とも成長できません。登山中(休憩も含む)は登山に関わる基本的なこと(水や行動食の補給、雨具や防寒着の着脱、靴紐のチェックなど)は子ども自身でやらなければなりません。子どもであっても、今は何を優先すべきか、次は何をすべきかを常に行動に出せる意志と姿勢を見ます。
以上の評価基準に則り、トライアルの結果を発表します。
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【評価発表】
本評価は今回のトライアルについてのみであって、以降の登山を左右するものではありません。
■○○○○(5年生・男子)
A-5
B-5
C-4
D-5
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合計19点
■○○○○(1年生・男子)
A-5
B-4
C-5
D-4
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合計18点
■○○○○(1年生・男子)
A-5
B-4
C-4
D-4
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合計17点
■○○○○(1年生・男子)
A-4
B-4
C-4
D-4
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合計16点
■○○○○(1年生・女子)
A-3
B-3
C-3
D-4
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合計13点
■○○〇〇(年長・女子)
A-3
B-3
C-4
D-3
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合計13点
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【講評】
トライアルでとりわけ重要視したのは、最初の項目「カラダの評価」でした。参加した子どもたちには全員、持久力はあります。キッズの縦走を二度、三度と経験してきたことでもそれは明らかです。
しかし、ジュニアの山では歩みが遅いことや、つまづいた、しりもちをついたり、転ぶことは、大きなリスクを招く要因につながります。腰砕けになった状態で降りることも、かえって危険を招きます。よほどの傾斜でない限り、二本の足でしっかりと立って、カラダを前に向けて降りられるようにならなければなりません。そのためには、もう少し身長が伸びることや、カラダの軸(とくに下半身の安定)がしっかりしてこなければ無理なのです。
また、脚力は持久力とは異なります。ローギアからいっきにトップギアに入れて歩ける能力であったり、難しいルートでも状況を見て自在にカラダを合わせていけるしなやかさとも言えます。そのためにも、カラダの軸が安定して登り降りできなければ、持久力はあっても脚力は伴いません。
来年度のジュニアクラスは、新旧のメンバーに関係なく全員で基本から徹底的にやり直します。全員横一線に並んでスタートしますので、大いにファイトして下さい。
2016年12月25日
親子山学校
関良一
※個別の寸評は割愛しています。