心を写す子どもの絵
先日の陣馬山に、親子3人で参加したTさん一家のお母さんから、私のもとにメールが届きました。
メールには一枚の絵が添付されていました。5歳のお子さんが描いた絵でした。
Tさん親子は、4月から親子山学校のキッズクラスに入会し、その初めての山登りが陣馬山でした。
「初めて親子で山に登った興奮が、いまだにさめません。参加させていただきまして、ほんとうに、ありがとうございました」
メールには、母親の言葉が短く綴られていました。初登山の喜びは、一緒に参加していた5歳の子にとっても同じだったのでしょう。
母親の言葉もさることながら、添えられていた子どもの絵が、何よりも初登山の喜びを饒舌に語っていました。
実際の山も、若葉と春の柔らかい日差しに溢れてはいましたが、絵の中のそれは本物の山以上に、豊かな色彩と躍動感に溢れています。
三人の家族や、一緒に登った仲間たち。どの表情にも笑顔が浮かんでいます。山の楽しさを全身で現している様子が伝わってきます。
いつもの山登りでは、一人ひとりの子どもの心の中を覗き見ることはできません。
5歳のこの子は、山で体験したわくわくするような気持ちをどうしても表現しておきたかったのでしょう。5歳の子にとっては、言葉や文字で表現するより、絵を描くことが一番の感情表現なのです。
ありったけのクレヨンを使って、それも明るい暖色系のものを見事に選びとって描いたこの絵には、大人には決して表現できない純粋さと希望に満ち溢れています。
この日、この子が山で過ごした時間は、おとぎ話の中の祝祭の場面のように、何もかも晴れやかで、安心して受け入れられる世界だったのでしょう。
この子が出会えた世界を壊さないためにも、そして、こんな風に山を見つめてくれる子どもたちをもっとたくさん育てられるように、私も、まわりの大人たちも、真剣に子どもたちに寄り添ってあげなくてはいけません。
その術(すべ)はどこにあり、どうすれば良いのか?
答えは、親子で通い続ける山の中にあるのだと思います。
この絵のような山に。
(絵とエピソードは、親御さんの承諾を得て掲載しています)