キッズクラス

満4歳以上の子どもと親が、 一年間の低山トレッキングを通して <歩くチカラ>を育む「キッズクラス」―――。

よちよち山OGで4月からキッズのNちゃんはまだ4歳


親子山学校のキッズクラスには現在、新旧あわせて70名余りの子どもたちが在籍し、毎月の定例トレッキングに参加しています。キッズクラスの最大の特徴は、満4歳の子どもから小学校6年生の12歳児まで、という幅広い年齢の子どもたちが一緒になって、同じ距離、同じ時間を共有しながら、目的地をめざして歩いていることです。最大で八つも歳が違う子どもが、同じペースで歩いているということは、実はとてもすごいことなのです。

小学校でさえ1年生から6年生までの年齢幅は6年ですが、授業や行事は学年ごとに分かれて行うのが前提です。ですから、そこでは能力や年齢の差を気にする場面はほとんどありません。でも、親子山学校のキッズクラスは、4歳の年少さんから12歳の小6の子までが一緒に同じ山に登っているのです。やっぱり、これはすごいことですよね。

さて、その4歳児にもいろいろおります。
キッズクラスの中で、4歳児はもっともチカラの弱い存在です。歩くのも遅い。気持ちもまだ弱い。できないことの方が圧倒的に多いので、どうしてもトレッキングでは最後尾の方を歩く歳月が長くなります。また、感情を上手にコントロールすることもできないので、泣いたりぐずったりする場面も時々あります。

そんな4歳児の仲間の中には、キッズクラスの下部グループに当たる「よちよち山」出身の子どもも混ざっています。よちよち山とは、2歳児、3歳児の子どもたちとその親で構成されるグループです。このクラスも毎月山歩きをしていますが、登る山は標高の低い、距離も短い山とルートです。歩くのがどんなに遅くてもかまわない。まだ幼い子どもたちに、山を恐れずに、のびのびと歩いてもらうことを一番に取り組んでいる、ゆるいクラスです。

そのよちよち山に、今年の3月まで在籍していた4歳児が、現在キッズクラスに数人います。半年、あるいは一年近くよちよち山に参加してきた子どもたちです。でも、その子たちがキッズクラスにやってきた4月は、年上の子や経験の長い子たちの体力やスピードに圧倒されていました。存在感を発揮する場面があるとしたら、思い通りに歩けずにぐずったり泣いたりするときだけです。

でも、実はよちよち山出身の4歳児たちは、めったなことでは泣きません。登ってきた山やルートのレベルこそ低かったかも知れませんが、この子たちには「ボク(わたし)だって山登りしてきたんだ!」という自負は心の奥底にあるのです。

4月、5月、6月と回を重ねても、よちよち山出身の4歳児たちは、依然として最後尾の方を歩いていました。ところが、四ヶ月がたった7月になると、グンと伸びてくる子が現れます。気がつけば、同じ年齢や、年上の子どもたちにも見劣りしない力強さで歩き切ってしまいます。先頭グループと中間グループの間をキープしたまま、最後まで歩き切ってしまうのです。二年目、三年目の子どもや、年上の子を何人も追い抜いて淡々と歩いてしまうのです。

その子たちをそうさせる原動力は、「よちよち山」でやってきた歳月にあります。山登りの経験がまったくなしの4歳児よりも、2歳、3歳のときに半年でも一年でもやってきた4歳児は、スタート時点ですでにアドバンテージをもっているのです。そして、上位にいるお兄ちゃんたち、お姉ちゃんたちに追いつく機会を、虎視眈々とうかがいながら、誠実に真摯に山に向き合っているので、早い子は四ヶ月ほどで同レベルにまで達することができるわけです。

4歳、5歳、6歳という小学校に上がる前の子どもは、実はとてつもなく大きなチカラをもっています。これをいかに引き出し、伸ばしてあげられるかが親の役目であり、私の仕事です。その時期に、子どもがしっかり歩けないとしたら、それは親の問題です。親自身が謙虚に学び直さない限り、子どもはまっすぐには歩けないまま何年も苦労を背負い込むことになります。寄り道ばかりする子どもで終わってしまうのです。

「山登りがカラダの中にストンと入った」子どもは本当に安心できますし、親にとっても子どもとの山登りがいっそう楽しくなる時間です。キッズクラスは年齢、学年こそまちまちですが、キッズクラスの根幹を担うのは4歳から6歳の子どもたちです。この子たちがキッズクラスの主役なのです。