お知らせ

親子山学校からのお知らせ全般をお伝えします。

山には子どもの冒険心をくすぐるものがいっぱい!(北八ヶ岳・こまどり沢上あたり)


一昔と比べてみても、子どもたちを取り巻く社会は急速に変化しています。
子どもが社会やコミュニティーから守られているというのは、もはや神話か物語の世界であり、無力で立場の弱い子どもたちは、もっとも危険にさらされているとも言えます。大げさに言えば、子どもたちは毎日のように世界各地で誘拐されたり殺されたり、虐待やいじめに遭っています。

ほとんどの子どもたちには、それを回避したり察知する術(すべ)は何も持ち合わせていません。とくに日本人の場合はそれが顕著に見られます。どんなに親が「気をつけなさいね」と言っても、そのときにならなければ、あるいはそのときになっても、ほとんどの子どもたちはどうすることもできないのが現状ではないでしょうか。

「子どもの権利条約」一つとってみても、日本の社会がこれをまじめに守っているとはとうてい思えません。残念ながら、日本は世界に向けたこの「約束」を守っていません。
社会を変えていくための努力も必要ですが、それには気の遠くなるような時間がかかるのも事実です。まずは、足元の生活、日常からやれることを実践していくのが懸命だろうと思います。

さて、私がなぜこんな話から始めたかといいますと、子どもが犠牲になる事件を目にするたびに、その子にもう少し危機管理能力があったなら回避できたかもしれないと感じるからです。

私は先ほど、子どもに言っても無理だ、その場になってみても子どもには対処できないと書きましたが、それはあくまでも、なにもせずに無為な日常を送っている家庭の場合です。

ここに「親子山学校」で取り組んでいる一つの実践例を紹介します。それが子どもを守るための最適な手段かどうかは分かりませんが、繰り返し繰り返しカラダで覚えたことは、日常においても必ず応用され、とっさの判断にも役立つと思うのです。

「親子山学校」に初めてやってくる親子に、私が毎回申し上げていることがあります。「山では絶対に子どもの単独行動をさせない」「山では絶対に子どもを孤立化させない」ということです。これは、山での子どもの遭難や滑落を防ぐために、保護者の方々に口をすっぱくして言い続けていることです。

「親子山学校」では大勢の親子が隊列を組んで歩くことが多いので、前後の間隔が開き過ぎることに細心の注意を払います。万一、一部の親子なり子どもが前後の仲間から離れて孤立してしまうと、右折しなければいけない分岐点で、その親子は間違いなく直進してしまいます。これが道迷いや遭難につながり、気が動転してしまうと足場を踏み外して滑落、転落事故にも発展していくのです。

分岐点では必ず後方からやってくる仲間を待って、「次は右だよ」と教えてあげることも大切ですが、それよりなにより、子どもだけが全体から孤立する状況は、どんな場面でも絶対に作らないことを何よりも優先させています。子どもが登山道を外れておしっこをする場合でも、絶対に子どもだけでは行かせません。必ず親が同行するように指示します。

「子どもを孤立化させない」
「子どもの単独行動を許さない」

親子で臨む山では、これが安全のための絶対条件です。(大人同士でパーティを組んで登る山も同じです)親子山学校では、この約束を年間を通して行っている毎月のトレッキングの中で、ことあるごとに呼びかけ、すべての親子が常にその認識を持って行動できるように取り組んでいます。

また、山道を歩く際にも、おしゃべりにばかり夢中になっている子どもたちには「いい加減におしゃべりをやめなさい!」と叱ります。なぜ叱るのか。山では落石があったり、頭上の枯れ枝が落下してきたり、あるいはスズメバチが接近してきたり、場合によっては熊と遭遇することだってあるのです。そのとき、みんながワイワイとおしゃべりに夢中になっていると、そうした物音や気配を事前に察知することは100%無理なのです。

自分の足音さえ消してしまいたいほど、静かに歩くことでしか感じ取れない情報が、自然の中にはたくさんあります。そうした気配やもの音に対して無頓着なままでは、何年山登りをやってもその親子は一人前の登山者にはなれません。これを山で繰り返し実践できているかどうかで、日常での対処も心構えもまるで違ってくると思います。

一緒に歩く大人たちが、そうやって常に子どもたちを気遣い、サポートしていることを、子どもたちもやがて気づくようになります。そこから子ども自身も学びとり、成長して行きます。そういう子どもは、日常の中においても危機を察知したり、うまくかわす能力が自然と身につくはずです。

「山歩きはなぜいいのか?」
たくさんある理由の中の一つとして、今回は山登りは子どもの「危機管理能力」向上にも役立ちますよという部分にフォーカスを当ててお話しました。