コラム

低山から高山まで、 仲間の親子と登る山々で出会ったこと、思索したこと、 憧れること、悔やむこと、 そして嬉しかったことを綴ります。 親子山学校を貫くインティメイトな山の世界・・・。


最終回「子どもとつなぐ手」

最近、孫のような小さな人と手をつないで
歩いたことがありますか。私にはまだ孫は
いませんが仕事柄、幼い子どもと山登りで
手をつないで歩く機会があります。その子
の親ではない私だからこそ、子どもと手を
つなぐことで感じることがたくさんありま
す。思いつくまま並べてみましょう。

 私に心を許してくれる子どもの手はふん
わりとして柔らかで、握った手から暖かい
ものが伝わってきます。反対に私を警戒し
緊張している子の手は硬く冷たく、できれ
ばその手を振り解こうという気持ちさえ伝
わってきます。子どもは正直ですから、そ
うした感情が握った手からも感じ取れるわ
けです。

 健康な子どもの手は冬でもポカポカと暖
かく、表情の乏しい子どもの手は夏でも冷
たいものです。手をつなぐだけで相手の心
や体の状態が分かります。

 主体的に歩ける子どもは手を握っていて
も一体感があってこちらも楽しく歩けます。
手を引かれないと歩けない子どもは、こち
らの心まで引きずられるようでとてもくた
びれます。それでも手さえ握っていれば、
その子がつまずいて転びそうになってもす
ぐさま手を引けば転倒を防ぐことができま
す。手をつなぐ行為は、子どもを安全に確
保するためのザイル(綱)のようなもので
あり、心を通わせ信頼の絆を育む素敵なス
キンシップです。

 あなたにもしも小さなお孫さんがいらっ
しゃるなら、散歩の時でも構いませんから
その愛らしい手をやさしく握って一緒に歩
いてみて下さい。手のひらを通して子ども
から暖かいものを感じた時、それは何物に
もかえがたい喜びとなるはずです。これか
らも子どもや若い人たちと共に、どうぞい
つまでも健やかにお過ごし下さい。

 一年間のご愛読ありがとうございました。

(初出:『女性のひろば』2024年7月号)


文と写真:関 良一(親子山学校主宰)