コラム

低山から高山まで、 仲間の親子と登る山々で出会ったこと、思索したこと、 憧れること、悔やむこと、 そして嬉しかったことを綴ります。 親子山学校を貫くインティメイトな山の世界・・・。


「朝カツ」

「できれば朝カツはしたくないなぁ」と常々思っています。
朝カツと言っても、朝からカツ丼を食べるとか、
朝からトイレ掃除をするとか、そういう殊勝な話ではありません。

キッズクラスの集合・出発前に、参加親子に向かって、
朝から喝を入れることを勝手に「朝カツ」と呼んでいます。

喝といっても、「エイエイオー!」と鬨(とき)の声を上げる
ような勇ましい内容ではありません。

「おまえらマジメにやれよ!」「山をなめんなよ!」
という意味合いの、激しい叱責でございます。

朝カツは、基本的には出発前にしかやりません。
集合時点で、参加する親子の中にざわざわとした緩みを
感じたときに、フンドシを締めなおすためにカツを入れます。
ゆるんだままの気持ちでは、そのあとの登山中はろくなことが
ありません。

朝カツには、レベル1からレベル3まであります。

レベル1でも、けっこうキツイと思いますが、30秒前後で終わります。
レベル3になると1分、2分と叱責が続いて、私の血管は切れそうになり、
もう自制が利かない状態です。命と引き換えといっても過言でないくらい、
頭に血が昇っている状態がレベル3です。レベル3になると私も命がけです。

朝カツは、親子全員を前にして行います。
親子山学校の申込み時には、親の職業欄はありません。
親が会社の社長だろうと、大学の先生だろうと、医者だろうと、
警察官だろうと、子どもが4歳児だろうと、一切関係ありません。

時間にルーズな行為、安全を怠る行い、チームを乱す行い、
自然を敬えない行い、要するに山登りをなめてかかる者は見過ごせません。
大人も子どもも関係なく叱ります。親の前で子どもを叱り、子どもの前で
その子の親も叱ります。

山登りは、へらへら、わいわい、テキトーで済む場所でも
運動でもありませんから、集団で行動する親子山学校では
一人ひとりの認識・自覚を持ってスタートすることが不可欠なのです。
その意識さえあれば、あとはユルヤカに、おだやかに山登りを
楽しめます。

私も朝っぱらから「朝カツ」なんかしたくはありません。
冗談抜きで血圧上がってやばいんです。
「なくそう朝カツ! 朝カツ・ゼロ運動!」
これが私の目標です!

(写真:ある年の秋。八ヶ岳の赤岳鉱泉前で出発前にビシッと整列して、山小屋のスタッフに別れの挨拶をしていた高校生たちと引率教師の姿が清々しかったです。山小屋の人から高校生に「君たちが山で経験した困難は、これからの人生でもきっと役に立つ。それを支えに、強く生きて下さい」と言ってたのを耳にして、私も思わず熱いものが込み上げてきました)