コラム

低山から高山まで、 仲間の親子と登る山々で出会ったこと、思索したこと、 憧れること、悔やむこと、 そして嬉しかったことを綴ります。 親子山学校を貫くインティメイトな山の世界・・・。

晴登雨登と書いて「晴れと雨と」と読んで下さい。晴れの日も雨も日も親子で山に登ってきた親子山学校の20年の歩みを振り返って、月刊誌『女性のひろば』(日本共産党中央委員会発行)の2023年8月号から2024年7月号まで一年間連載させていただいコラムです。今から順番に連載時のコラムを親子山学校公式ブログでも掲載させていただきます。


雷雨の中、麦草峠にやってくる親子メンバー(2023年8月)


晴登雨登 第1回「私が雨の日に登る理由」

 夏だと言うのに、いきなり雨の山登りの話
で恐縮です。私の好きな四文字熟語は「雨天
決行」です。熟語と呼ぶほどでもありません
が、なんと潔い響きでしょうか。「◯月◯日、
高尾山、雨天決行」と山行計画を書くたびに、
「ウテンケッコウ」だけは〈声に出して読み
たい日本語〉です。

 私が主宰する親子山学校では雨でも山に登
ります。「雨だから」と中止にしたことは、
20年間でただの一度もありません。台風が
接近していても、公共交通機関が動いている
限り雨天決行です。そんな日は登頂にはこだ
わらず、雨をリアルに感じながら、現場でや
れることをやってみるのです。

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 雨の日の山は日差しもありません。それな
のに、森や足元の植物にいつも以上に色彩を
感じます。風や草木の匂いも鼻腔を刺激しま
す。やがてレインウエアを打ちつける雨が、
まるで音符のように響いてきます。つまり、
雨が私の五感を刺激し、全身を自然と一体に
させてくれるわけです。

 登山道沿いの沢を覗くと濁流がゴウゴウと
渦巻いていたりします。「慎重に進もう」と
誰もが素直に思うはずです。「怖いな」と思う
ことと「素敵だな」と思う感性を磨く。雨の
日は、山登りの奥深さと魅力をいっぺんに学
べる日なのです。

 たとえば日本人はいつの頃からか死を忌み
嫌い、死を隠そうとしがちですが、同様にち
ょっと雨に濡れただけで大騒ぎする人も増え
ているようです。極端な例に思うでしょうけ
れど、死も雨も忌み嫌うものではありません。
雨を味方にして山登りをはじめれば、山はと
ても楽しい世界に変わります。雨天決行!子
どもが電車ごっこで言う「出発進行!」と同
じように、ちょっと軽やかな気分になりません?

【ワンポイント】雨の日は、登山道に浮き
出た木の根っこには絶対に足を置かない。
うかつに乗ると横滑りし、地面に叩きつけ
られて大ケガしますよ。


(初出『女性のひろば』2023年8月号)


文・写真 関 良一(親子山学校主宰)