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高尾山でも近年、盗掘に遭っている植物の一つセンブリ


東京・高尾山のビジターセンターが発行しているニュースレター「のぶすま」2022年秋号(vol.69)には、「高尾山で起きている問題・観察マナー編」と「高尾山のれきしvol.31高尾山のゴミ問題、昔と今」と題した記事が大きく掲載されています。

私の知る限り「のぶすま」でここまで山のマナーについて突っ込んだ記事を見たのは初めてです。それだけ心ない人たちによるマナー違反が増え、深刻な問題に発展しているということだと思います。

下記のURLからも「のぶすま」秋号が閲覧・プリントアウトができますのでぜひご覧下さい。
https://ces-net.jp/takaovc/?page_id=465


陳情書に掲載した「登山道下の斜面に投棄されていた原付バイクの写真」(2022年1月)


京王線高尾山口駅前から登れる草戸山(標高364m)は、親子山学校でも年に数回登っている山です。登山口から四辻に向かう最初の山道を登っていくと、右側の斜面の下に不法投棄されたような原付きオートバイが何年にも渡って放置されていました。ナンバープレートが外されており、盗難車なのか不法投棄なのかも不明でした。いつまでも放置されている様子が気になって、今年の4月に現状の状況をA4用紙6枚にまとめたレポートを携えて地元の高尾警察署に陳情という形で提出しました。提出から半年ぶりの10月、親子山学校のキッズクラスの月例山行で草戸山に登った際、放置されていた場所から原付きオートバイの姿がなくなっており、無事に撤去されていたことを知りました。


ジュニアクラス6年生の卒業制作は謝恩会場の一角に展示された


親子山学校を大学に例えるなら、キッズクラスは学部でジュニアクラスは大学院というイメージです。「小学生だろ。ずいぶんと大袈裟なたとえだな」と笑われるかもしれませんね。でも、その実態を垣間見たら、笑いが次の瞬間にはひきつってしまうかもしれません。

二年目のコロナ禍で迎えた2021年度。ジュニアクラスの6年生たちは、例年なら続けて来れた八ヶ岳をはじめとする高所登山に行けない状況でスタートしました。そうした中、「6年生一人ひとりで、自分がやりたい山登りをやってみたら」と提案を受け、すぐに取り掛かることにしました。「6年生企画山行」と称して始まったジュニアクラス6年生たちの山登りは、やがてどんどん進化して、気がつけばほぼ一年がかりの卒業制作に発展していったのです。

自分で考えたテーマをしっかりと調べて、計画を練って準備をして、実施に運ぶ。通常ならここで終わっても文句は出ません。でも、親子山学校はここでは終わりません。

実施の次に発表会を開きます。計画し、実際にやってみた結果、何がどう違ったりうまくいったのか。それを冷静に振り返ってまた資料を作り、大人も加わってみんなの前で発表します。「あゝ、これでやっと終わりか」というと、まだまだ終わりません。

「君たちは大学で言えば院生なのだから、最後に自分が研究したことを論文(卒業制作物)にして提出しなさい」と指示します。メールで何度もやり取りし、ダメ出しをし、親子山学校の卒業式を迎える3月下旬まで、6年生への手綱を緩めることなく「本気の論文」を作らせました。

もちろんすべてを子どもだけでやり遂げることは不可能です。そこには子どもの保護者も大きく関わっています。親子山学校ですから、子どもだけではなく親も一緒にやってナンボのものです。それでも根底にあるイメージや情熱は、子ども自身の中から湧いてきたものです。ですから、子どもたちは最後まで諦めず、ギリギリまで葛藤しながらより良い卒業制作にしようと戦い続けました。

この春、ジュニアクラスを卒業していった8人の6年生たち。その卒業制作のラインナップは以下の通りです。




2021年度の6年生の卒業生は14名ですが、そのうち6名がキッズクラスで山登りを続けた子どもたちです。6人とも男子です。高学年になった5年生から、大人も混ざった班のリーダーやサブリーダーをやらせ、6年生としての最後の一年まで子どもリーダーを続けてもらいました。

普段住んでいる町や通っている学校は別々ですが、彼らは月に一回の親子山学校の山行を、短い子では五年間、長い子は足掛け九年間続けてきたので、山登りの時に何をやるべきかを良く知っています。ですから、高学年になってからの二年間の中で、私から彼らにああしろこうしろと教えることは何もありませんでした。謙虚に山に向き合ってくれる彼らは、ある意味大人以上に頼れる存在でした。

卒業まで残りふた月となった今年(2022年)の1月末、入笠山のマナスル山荘でキッズクラスの6年生を前に、私は生涯で初めての授業を行いました。題して「人間について」。6年生まで純真に山登りに取り組んでくれたこの子たちに、私は哲学的な対話を試みたのです。

私にとっては初めて行う授業でしたが、授業「人間について」は今から50年以上も前に行われたものでした。時は1971年2月19日、場所は福島県郡山市立白岩小学校の6年生の学級。授業を行ったのは林竹二(1906年〜1985年)という、東北大学名誉教授や宮城教育大学の学長を歴任した教育哲学者でした。